講演 「原発と原爆」 ⑨「生命道に対する罪」

「人道に対する罪」とは、戦争中ばかりでなく平時においても「一般住民に対して行われる殺人・殲滅その他の非人道的行為」に当る。

原発は人道に対する罪と言える。それは殲滅に当るからである。長い間かかって多くの人を殺してゆくからである。チェルノブイリがそうである。今、福島の人は被爆したのではないかと大変恐れている。これはその他の非人道的行為に当る。

しかも放射能の影響を受けるのは、単に人間だけではない。家畜、ペット、野生動植物を含む あらゆる「生命」が被害を被る。したがって「人道に対する罪」という人間中心の身勝手で狭い犯罪概念を改めて、「生命道に対する罪」という新しい法概念を 打ち立てるべきではないかと考える。

反核・反原発を統合するために

現在、福島第一原発事故による大惨事という経験を強いられている我々市民、とりわけこれまで反核運動に取り組んできた組織に身を置いていた者たちは、このような歴史的背景を持つ事故の弱点を徹底的、批判的に検討する必要がある。

そのような真撃な反省の上に立って、今後、反核兵器運動と反原発運動の統合・強化をいかに推進し、人間相互の関係ならびに人間と自然との関係が平和的で調和的な社会をいかに構築すべきかについて、広く議論を進めていくことが今こそ求められている。

(文責「念仏者九条の会・山口」事務局)

 

(著者紹介)

田中利幸さんの著書、岩波ブックレット『原発とヒロシマ「原子力平和利用」の真相』(500円税別)が岩波書店より出版されています。